11月19日(土)と11月20日(日)の2日間、オープンソースカンファレンス2011 Tokyo/Fallに参加してきました。
11月19日(土)
午前中は仕事してたので午後から参加。
Web技術の現状と将来
主にHTML5の話でした。W3Cの標準化の体制の話は新鮮でした。
C++の標準化委員会はクローズドなメーリングリストで議論されているのですが、W3Cの方は全ての議論がオープンに行われていて、メーリングリストを誰でも見ることができるそうです。とくに隠す理由はないはずなので、C++の方もどうにかしてオープンにしたい・・・。
OAuth 2.0 と OpenID Connect
OpenIDはGoogleアカウントの管理などにも使われてるそうな。OpenIDの問題はURL直書きであることで、サービスの裏で使うなら便利に使えますよね、ということみたいです。
IT業界で働く女性(そしてみんな)のキャリアを一緒に考えましょう
ちょっと大企業寄りな気がしたのと、キャリアというのが管理職コースのことに寄ってた気がするので、もうちょっと話をふくらませて欲しかったかなと思いました。転職を視野に入れた活動や、技術分野のエキスパートとして生きるというのもひとつのキャリアかなと思います。でもまぁ、ディスカッションのセッションってだいたい時間が足りずに終わりますよねぇ。悩ましい。
11月20日(日)
この日は朝から参加。明星大学遠いです。
翻訳/L10n BoF
翻訳プロジェクト同士の情報共有をしていきたいという動機から始まったBoFでしたが、Linuxディストリビューションの話に寄ってたので口出しできないうちにタイムオーバーになってしまいました…。残念。
でも、Doc-ja Archive Projectという名前を知れたことだけでも収穫はあったかなという気はします。
経済学でOSSを考える
大学でOSSの研究をしてるという、なんともめずらしい方の研究成果(結果?)の発表。
オープンソースというのが、企業にどんな利益をもたらし、市場にどんな影響を与えていくのかという話でした。企業にもたらすのは、よく考えられたライブラリを導入することにより、製品をより短期間で高品質に作れるということ。それによって空いた時間をオープンソースへの貢献(恩返し)に当てれば、そのOSSはさらに便利になって、回りまわって自分の会社への利益になる。開発が容易になることにより、他の会社も同様に短期間で高品質なものが作れるようになるので、企業は他の付加価値で勝負しなければならなくなる。これが市場に与える影響。そうすることで、社会がより便利になっていくという循環を作り出すことができる、と。
今までのオープンじゃなかった開発体制でイノベーションを起こしていくクローズドイノベーションと、オープンソースを活用していくオープンイノベーションという考え方が導入されていました。
クローズドイノベーションでは、研究開発も含め全てを社内で行い、そのノウハウ自体は表に出さない、というもの。これによって企業は自分たちの独自性というところで勝負していく。
オープンイノベーションでは、いろいろな人がノウハウを持ち寄ることで、より大きなイノベーションを生み出していきます。
現代では、すでにオープンイノベーションがクローズドイノベーションを上回る事例が増えています。企業が一社で生み出したソフトウェアよりも、ボランティアの集合が生み出したソフトウェアがより広く使われるようになってきたのです。
OSSを使うにあたって一番問題なのはタダ乗り。OSSを使うだけ使って、バグ報告もしないしパッチも投げないし採用事例を報告もしないし、OSSを使って得られた利益は全部自分のもの。これは経済学的に一番問題だという。実際そういう企業は多いのだけど、OSSを使ったら貢献で返してもらうというのはどうやって推奨していけばいいのかは濁されていました。これは今後の課題ですね。
オープンソース開発者がディー・エヌ・エーを選ぶ理由
元々サイボウズラボにいた方が、なぜDeNAに入ったのかという話。
自社でいろいろ研究開発していたけど、多くのユーザーに使ってもらうソフトウェアでなければ使わないものを作ってしまった。おもしろくないから放置していた。DeNAが自分と同じアプローチのものを作ったという。くやしい、どうしようか。そうだ、自分が中の人になってしまえば自分が作ったと言えるじゃん。
という経緯だそうです。自分が作ったものを活用できるところに移る、というのは正しいモチベーションだと感じられました。これは人材のいい循環だと思います。
jus研究会東京大会「法林浩之的ITコミュニティ運営論」
法林さんの発表。法林さんがこれまでコミュニティ活動してきた経緯や方針といったものが話されていました。私もC++コミュニティを運営する立場なので、いろいろと思うところがあります。まだ考えがまとまっていません。ちなみに法林さんとは、勉強会カンファレンス 2011のときに知り合いました。
あ、法林さんも紹介していた『アート・オブ・コミュニティ』は、コミュニティの運営に携わる方にとってもすばらしい本ですが、コミュニティに参加する方にもぜひ読んでもらいたいですね。
OSSでここまで出来る!横浜市消防局でのMoodleを使ったe-ラーニング導入事例 完全紹介
横浜の消防署の社内システムにMoodleを導入したというお話。おもしろかったです。すばらしかったです。
Moodleはe-ラーニング的なシステムを作ることを主な目的としたOSSですが、社内SNSと統合することで多くの方に積極的に使ってもらえるようになったそうです。また、プラグインも豊富にそろっているため、社内SNSに必要な機能は十分だったとのこと。今では「こんなことをやりたい」と言い出したプログラマでもなんでもない方があらたな機能を追加して管理者になり、運営できてるそうです。
このようなシステムは、大手SIerにお願いすると数ヶ月かかる上ここまでカスタマイズ性の高いものにはならなかっただろう、と言っていました。このような、再利用可能なコンポーネントを組み合わせてシステムを構築する、ということができるようになると、今まで顧客別のちょっとした差異のためにシステムを作り直して稼いでいたような会社が、これまで通りでは生きれなくなり、新たな道を模索しなければいけないという状況を作り出せるようになるので、いい流れなんじゃないかと思います。
震災後の復興に向けたICTの活用事例と「SAHANA」の取り組みご紹介
震災後に災害管理システムを立ち上げたIBMの事例、体制、方針などの紹介でした。
こういったときに会社の利益を無視した貢献活動ができるのは、大企業ならではだなーと思いました。会社に余力さえあれば災害復興のために活動したいと考えているところはいっぱいあるはず。
IBMが作ったシステムの特徴としては、被災地に不足している物資の管理のために、Android端末にインストールしたアプリを自衛隊の方々に使ってもらい、定期的に「足りないものはありませんか?」と聞いてまわる手間を軽減した、というのがひとつ。もう一つは、TwitterやFacebookのようなソーシャルなつぶやきを自然言語処理で解析し、不足物資などの情報を抽出するというもの。
こういったシステムを、震災の次の日からはじめて2ヶ月で立ち上げたというフットワークはさすがだと思います。「震災の直後に動けないなら意味ないじゃん」と思うかもしれませんが、震災直後は停電などの影響で「貴重な回線をそんなシステムに回せるわけないだろ」と言われたり、システムを導入する余裕が被災地には全くなかったそうです。そのため、「こんなものを考えているので、必要になったら言ってください」と自治体を回って消極的なアプローチにとどめつつ、ある程度落ち着いてからリリースしたそうです。
発表後、私が2つほど質問をしました。
Q. 「こういった災害時のためのシステムを作るのはすばらしいことだと思います。しかし、一般の方が災害時に頼る情報というのは現状、電話とテレビだと思います。このようなシステムをより広く知ってもらうためにどんなことができるでしょうか。」
A. 「現在は、テレビや消防署や警察といった組織はそれぞれが連携することなく独自で活動していることもあって、そういったアプローチは今は考えないようにしてます。それよりも、自衛隊の人の負担軽減といったできるところからはじめているのが現状です。」
Q. 「TwitterやFacebookのようなソーシャルデータを解析するというのはいい試みだと思いますが、自然言語処理というのはまだ発展途上の技術だと思います。緊急性の高い情報のためには、そのようなデータをプログラムで解析するよりも、いまはAmazonのMechanical Turkのように観測を人間にクラウドソースしたほうがいいのではないでしょうか。」
A. 「もちろんそうです。弊社のシステムでは、解析は飽くまでフィルタリングに止め、フィルタリングされた情報を担当者に渡すようにしています。」
今回のオープンソースカンファレンスでは、本当にいろんなことを学ぶことができました。
私はいろんな勉強会に参加するようにしてはいますが、このような大規模カンファレンスでは大きな組織の方に直接意見をぶつけることができたり、普段観測してるコミュニティと離れたところにいる方と話せたりするので、いい機会でした。
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